知らない街に行くのはスリリングでもあるわけで(2004)

仕事帰りに練馬に向かった。とりあえず近況報告を兼ねて会ってみようと思ったのだ。特にその会社に入社するとかそういう事は考えず、ただ「友達に会いに行く」という感覚。その証拠に僕は缶コーヒーを2本持参して行った。

Yから「練馬」と言われたのだが、その時まで「練馬駅」というのがあるのを知らなかった。それくらい全く馴染みのない街。初めて降り立った練馬駅は想像していたものよりかは賑やかだった。教えられた住所には自動車整備工場があった。その脇に薄暗い階段が。急勾配でなんだか斜めってる階段。恐る恐る階段を上り、インターホンを押した。中からYが出てきた。

一部屋8畳くらいの部屋を二つ借りているらしく、僕は数多くのサーバが積んである部屋に通された。部屋の半分をサーバ。半分が応接スペースになっていた(ちなみにその応接スペースで使っていたデスクは今でも社内専用会議室に置いてある)。サーバの熱で部屋は暖かかった。とりあえず席に座り、缶コーヒーを開け、飲んだ。

どういう経緯で会社をやっているのか?などを聞きながら暫し談笑をしていた。するともう一つの部屋(執務部屋)から髪の長い男性が入ってきた。その男性は自分のマグカップを持参し、「ソフトサラダ」を食べながらやってきて、そしてYの隣に座った。無言で。

「だ、誰?」と思いながらも一応「どうも」と挨拶すると、Yがおもむろに「Sさん」と紹介した。この「Sさん」は会社のメンバーではないが、いろいろとサポートしてくれているという話だった。相関図的に何だかわからなかったが、とりあえずその場では「なるほど」と納得した。その後とくに「Sさん」は会話に入るでもなく、ただマグカップに入ったお茶を飲みながら、「ソフトサラダ」を食べていた。

帰り際、ちらりと執務部屋が見えた。奥に一人男性がひたすらパソコンの画面をみていた。「あれはpodさん」とYが紹介した。「podさん」はこちらを振り向く事もなく、一心不乱にキーを叩いていた。なんか変な人たちだなという感想を持ちながら帰路についた。

その後、Yから深夜「ドンキホーテに行かないか」と誘われた。ドンキに向かう車中「Sさん」「podさん」そして会社の事をいろいろと聞いた。興味は湧いたが、その時点で忍者システムズに行く事はあまり考えていなかった。それよりも大阪に行くか行かないかが気になっていた。先走り傾向があるYはすっかり僕が忍者に参加することを前提に動いていて、毎日のように写メで「机を用意しました」とか「これがtakanoriさんのMacです」などと報告してきたのだ。

この時点で自分のスキルとしては「HTMLを書ける」くらいしかなかった。後は経験があるレベル。自分の将来を考えた時、持っているスキルを活かした方が良いのではないか?インターネットに携わる仕事に就いた方が良いのではないか?そして紹介されている忍者システムズは単純に面白そうだ。

僕は会社に退職を告げ、忍者システムズに参加することにした。ターニングポイントとなった2004年の2月。

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takanori 机の上に空き缶を置きっぱなしにしたり、机の周りに荷物をいっぱい置いていて注意される人。 詳しくはこちら